★ 美味しくないつけ麺屋の支持層について思いを巡らせる

と或るつけ麺屋に行った。最近、つけ麺という食べ物が個人的に気になりつつある中、その店は驚きの低価格を掲げ、私の居住地周辺に複数店舗を出店する繁盛ぶりで、私の興味を引いていた。人気の根拠を私の舌で知りたく、とは言え“驚きの低価格”なのだから、過剰な期待を抱いて勝手にガッカリしないよう心掛けてもいた。具体的には、松屋辺りのレベルを想定して行ってみた。ところが、私の見積もりはまだまだ全然高過ぎていた。不味いとまでは言わないが、美味しくもない。お腹は膨れるが、嬉しさを感じない。損をしたとは思わないが、できれば同じお金で他の店に行ったほうが良い。それこそ、松屋辺りにでも。そんな微妙なつけ麺屋が、店舗数を増やす程に繁盛しているのは、私にはとても解せなかった。

この違和感は、一晩経っても尾を引き続けた。私は昼食を摂りながら、昨夜のつけ麺とつけ麺屋の微妙さと、それに反する人気ぶりについて、ずっと考え続けていた。目の前の食べ物をないがしろにして他の食べ物について考えるのは、目の前の食べ物とそれを作った人に失礼かとは思ったが、どうしても解せないので考え続けずにいられなかった。それにだいたい、「目の前の食べ物に失礼」とか言ったって、私が今口にしている食べ物だって、ぶっちゃければ別段美味しくはない。某地方の著名ご当地焼きそばを謳った焼きそばなのだが、実際に食べてみると、屋台の焼きそばに肩を並べる程度の味でしかない。会社の近くなのと、値段が安いのと、麺なので気軽に食べられるのと、あとは私が「焼きそば」という食べ物に対して、裾野の下の方までカバーできるほどの愛着を抱いているからこそ、こうやって比較的頻繁に通っているだけの話なのである。

……と、ここで、目の前の謎が霧のように晴れた。そうか、あの店のつけ麺は、私にとってのこの店の焼きそばみたいなものだったのか。

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