自由が丘界隈に何度も出没していた頃には、「いつでも行けるから、いつか行けば良い」と軽く考えていた、黒船。私が自由が丘と縁遠くなっても、黒船は、新宿伊勢丹の菓子売り場で私の視界に留まり続けた。大手百貨店に迎え入れられる程の格調高い店だと初めて知って、少し怖じ気つきつつ、手が届く範囲の食の好奇心が勝り、バウムクーヘン好きとしてかねてから気にかけていた、「黒糖バウムクーヘン」を買って帰った。
「黒糖バウムクーヘン」という名称から、人はどんな菓子を思い浮かべるだろうか。私の思い描いていた「黒糖バウムクーヘン」は、砂糖の代わりに黒糖を用いて焼き上げられた、褐色味を帯びるバウムクーヘンであった。それ以外の想像図は全く浮かんでいなかった。だから箱を開けて、黒糖の糖衣を表面にまとったバウムクーヘンがそこに鎮座していた時、あまりにも意表を突かれ過ぎて呆気に取られた。えっ糖衣? ……えっ? ……えっ?
何故そこまで虚を突かれたかというと、舌先にダイレクトな甘さをもたらす糖衣を、高級なバウムクーヘンのオプションとして認識していなかったからであった。しかし、実物を目の前にして改めて考えを巡らせてみると、そういえばユーハイムのバウムクーヘンは、白い糖衣を被っていた気がするのであった。フランクフルタークランツともなれば、バタークリームにアーモンドチップにパウダーシュガーまでまとっていたのであった。そして、別の洋菓子に思いを転じて、クリスピークリームドーナツのオリジナルグレーズドがまとうグレーズは、ダイレクトに甘いけれども低俗な甘さではなかった※1。
――ここまで考えてきちんと納得して、私は黒船の黒糖バウムクーヘンを食べた。ダイレクトに伝わる甘さと黒糖の香りは、バウムクーヘンの風味を決して妨げず、全体的にちゃんと計算されたおいしさなのであった。
※1 チョコレートグレーズドスプリンクルまで行くと、チープと称しても差し支えなさそうな甘さになる。
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