私は、渋谷という街が苦手である。何処が苦手かを問われた場合、簡単な説明で終わらせたい時には、「駅前のスクランブル交差点には、あんなに混んでても普通に歩き煙草してる若者がいるんですよ! あの街はその手の、配慮が足りない若者ばかりが多数集まってそうな怖さがあるんです!」と話している。しかし、実際の理由は少し違う。渋谷の人種は、“イマドキノワカモノ”の一言でひとくくりできそうな層が非常に厚く、その「自分とは違う人種の集団」がもう既に、私には苦手なのである。部外者が学校内部に入り込んでしまい、制服集団の中で悪目立ちしてしている感覚。秋葉がヲタばかりで埋め尽くされていた頃は、「私はあそこまで傍若無人にエロゲ話しないし、出掛ける前にシャワー浴びるもん!」と思ってこそいたものの、渋谷に感じる居心地悪さのようなものは感じなかった。
私が渋谷へ行く必要がある場合、行きは山手線で急いで向かい、新宿を発車した段階で既に“イマドキノワカモノ”密度の高い車内で息を潜める代わりに、帰りは可能な限りバスを選択し、“イマドキノワカモノ”の空間から速攻で離脱する感覚をバス車内で味わって、安堵と満足の深い溜め息をつく。バスは電車と違い、空間共有性が高くないので、話し声や臭い等で自己主張する輩を除き、どんな人種と隣り合わせても特別意識せずに済むのもありがたい。随分時間がかかるのが珠に瑕だが、ゲームや文庫本を予め持ち込んでおけば、全く問題ない。渋谷からはバス。バスが良い。バス大好き。
いつものように、渋谷から「中野駅行」バスに乗ろうとバスロータリーに向かった私は、そこで初めて見る行き先のバスを見つけた。――「阿佐ヶ谷駅行」。興味津々に乗り込んでみたこのバスが、実にスリリングでエキサイティングなバスであった。何せ、発車直後から、センター街を通っていくのである。ABCマートも、最近出来たばかり風のワールドワイドな鯛焼き屋も、車道ど真ん中からの文字通り上から目線で見下ろすと、大変に新鮮であり、気分は観光。そしてその後、バスは京王線沿線辺りの舗装が荒れた道をカッ飛ばし、久々の重度な乗り物酔いをもたらしたのであった。景色がつまらなくなった辺りからGBASPで遊んだのが、乗り物酔いに拍車をかけた。