先日、確か雑誌のスイーツ特集記事を読んでいた時に、「凹カステラ」というものを見つけた。普通のカステラは、細長い四角形で、底にザラメが沈んでいて、底と表面にきつね色の焼き色が付いている以外、全体は金色にふんわりと焼き上がっている。しかしこの「凹カステラ」は、まず円筒形をしていて、敢えて中身までは火を通さず、とろりとさせている為に、真ん中が凹んだ形で出来上がり、それが名前の由来なのだという。
これを読んで、「とろりとしたカステラは想像が及ばないので食べてみたいなあ」と思っていたのだが、友人がこのたび、似て非なるカステラを見つけて持ってきてくれた。中身が半熟なのが「凹カステラ」と同じである他に、砂糖には和三盆を使用しているのがポイントであるらしい。どうやら、「凹カステラ」に端を発した“半熟カステラブーム”というものがあって、半熟カステラが幾つか点在している気配。
その辺を今は深く考えず、喜んで受け取って切って食べてみると、表面はふんわりした通常のカステラのような生地が、内側に進むとしっとりとチーズケーキのような口当たりに変わり、そして芯はとろりとしたカスタードクリームのような質感。一昔前だったら、こういう商品は「未完成」と見なされ「世に出すべきではない」と判断されて切り捨てられたであろうところが、現在は食感の移り変わり具合をユニークと評され人気を博すというのだから、今の時代の自由さはつくづく良いものだと感じた次第である。