自然災害数ある中で、台風は規模が大きい反面、進路予測により被害を最低限に抑えられるという点で、他の自然災害よりも御しやすいと言える。
この日、台風が接近した。台風が接近すると、雨と風が強まる。雨と風が強まると、東京においては、電車がすぐ止まる。電車が止まると、まだ会社にいた場合、家に帰れなくなる。家に帰れなくなると、少なくともその日の生活は窮屈なものになる。だから多くの会社では、台風が接近する日に、「仕事を早めに切り上げて家に帰るように」といった業務指示が出る。
私の会社でも、「仕事を早めに切り上げて家に帰るように」といった業務指示が出た――らしい。本社からの社内便は止まったし、本社の従業員達は早めに帰宅した――らしい。別拠点で業務に従事している私達は、クライアント都合により、早めの帰宅が許されていなかった。正確には、「クライアントが『早く帰っていいよ』と言えば早く帰れるが、言ってもらえないと帰れない」身の上だった。私は、本社の従業員を羨ましく思いながら、軽い絶望に囚われて仕事を続けていた。「台風如きで早めに帰るなんて軟弱」「電車が止まって帰れないなら、動き出すまで残業すれば良いじゃない」とでも言いたげな周囲を眺めながら、強い違和感にも囚われて仕事を続けていた。
こんにちわ!(ホンドタヌキ/動物たち・光と影)/何故か俺だけパルメザン粉チーズになりかけている(虎/ねこメモ)