2011-08-31 泣き叫ぶ少年を老人は頓着せず引きずり歩いた 他 [長年日記]

泣き叫ぶ少年を老人は頓着せず引きずり歩いた

ここまでにこれだけ動物園&水族館の話題を投入したら、別個に取りわけておいたネタを改めて書いておいたところで、もはや場所も日時も特定できなくなったに違いない。

と或る日の、と或る動物園又は水族館にて見た光景。その動物園又は水族館は、特別展示の小さな建物を、敷地内に設置していた。少年を連れた老人が、その特別展示を少年に見せんと、少年の手を引いて建物に向かっていた。そして少年は、老人に全力で抵抗していた。「嫌だ! 怖い!」。少年が恐れるものが何かは、その口から語られなかった。特別展示の内容なのか、その建物の狭さなのか、内部の暗さなのか、それとも他の何かなのか――。何であるにせよ、老人は全く頓着する様子を見せなかった。全力の抵抗にも意志を曲げず、少年を引きずっていき、遂には建物の中へと入っていった。

ここまでの情景を、私は老人達の真後ろで眺めていた。ちょうどその特別展示に向かうところだったのである。なので、館内に入っても少しの間泣き叫んでいた少年が、しかし徐々に順応したのか、最後には老人と共に展示物に目を遣るところまでも見納めた。内心安堵しつつも、釈然としないものが私の中に残った。あの少年が、長く泣き叫ばずにいたので、恐らく少年は今回の件を、心の傷なりしこりなりとして抱えることはないのだろう。それが安堵の理由であった。しかしそれは逆に言えば、年齢からしてそれなりに頭が固いであろう老人が、少年の恐怖を理解しないまま終わってしまった為、今後も似たような出来事を起こすだろうと予想できた。それが釈然としない理由であった。

今回の件に限らず、私は動物園&水族館及びその他のレジャー施設で、親と一緒にいながら泣き叫んでいる子供を見るのを好まない。楽しい筈の場であんなに悲しそうな理由を見聞きしたり妄想したりしてしまうと、私の中の昔の私、親に過剰に抑圧されていた私までが、同じように悲しくなってしまうからである。

Tags: 妄想

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