2011-02-13 我慢できない一言を我慢せよ 他 [長年日記]
★ 我慢できない一言を我慢せよ
ぶっちゃけ、最近仕事に出かけるのが、どうにもしんどい。いざ会社に着いて仕事を始めれば、さほどしんどくもないのだが、とにかく起きてから、行く道中がしんどい。ついでに、帰る道中もしんどい。
この日、私は電車に乗る時、自分の内なるしんどさがこみ上げてしまい、「キツイな」という一言をつい漏らしてしまった。すると、横に並んで一緒に電車を待っていた、見ず知らずの人が、即座のタイミングで顔を寄せて囁いた。「静かに」。――瞬間、記憶が20年以上前まで遡った。
中学生の私は、やはり電車に乗って通学していた。今と違い、学校に行くのは少しも辛くなかった。今仕事ができないと自分で思うよりずっと、当時の私は勉強ができなかったというのに、何一つ苦ではなかった。だが、電車の混雑は素直に苦手だった。何せ私は、今よりもっと小さかったのだからして。
その日、私の目の前に、髪の長い女の人が立っていた。車内は混んでおり、女性の髪から顔を背けることも、女性の髪が顔にかからない場所に移動することも、どちらもできなかった。私は昔も今も神経質ではないつもりだが、赤の他人の髪に顔を埋めるのは、いろんな意味で抵抗があった。ずっと必死に首をのけ反らせ、距離を極力保つその努力さえもが、身体と精神に負荷をかけ続け、遂に一定値を越えてしまい、「気持ち悪い」という一言を思わず漏らしてしまった。すると、横に並んで一緒に電車に揺られていた、見ず知らずのサラリーマンが、即座のタイミングで顔を寄せて囁いた。「おしゃべり」。
――我慢して我慢して、我慢しきれずについ漏らしてしまった一言を、我慢するべきだと彼らは言うのだった。仕事に出かけるしんどさ、倍増。
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