2010-09-06 「ぼくのエリ 200歳の少女」 他 [長年日記]

「ぼくのエリ 200歳の少女」(主演:カーレ・ヘーデブランド/監督:トーマス・アルフレッドソン)

公式サイト

と或るSF系の方のTweetで存在を知り、「北欧の香りがする吸血鬼映画らしい」と期待を抱いて観に行った映画。当初は、“美少女吸血鬼映画”という枠でひとくくりできる「ジェニファーズ・ボディ」(→公式サイト)と同日に観て、観る前から明らかな差異を具体的に味わうつもりでいた。しかし、「ジェニファーズ・ボディ」の公開があっという間に終わってしまい、「ぼくのエリ~」単独鑑賞と相成った。

主人公は、如何にも雪深い北欧にいそうな、淡い金髪と白い肌した少年オスカー。おかっぱ的な髪型をし、線も細く、家庭は母子家庭で、この外見と境遇からテンプレ連想する通りのイジメられっ子である。彼はイジメられる鬱憤を、一人で過ごす夜間にだけ見せる暴力性で発散している。また、これは生来的なものか、それとも年齢的なものか、猟奇事件を好んでスクラップ帳に集める一面もあり、隠し持った消極的な残虐性が伺える。この主人公と、吸血鬼である永遠の少女エリが出会うのは、物語的に必然であると言える。

さて、エリとの交流の中で、オスカーは「やられたらやり返せ」(意訳)なる教えを受ける。言葉に留まらず、エリという自分の味方も得て、オスカーは仕返しに打って出る。これまでの鬱憤が溜まっていたのを差し引いても、過剰に過ぎる仕返しであった。相手が心ある人間であれば、自分の受けた痛みから、これまでに積もった己の咎を知っただろう。相手が心弱い人間であれば、見くびっていた相手の意外な凶暴性を知り、以後の手出しを控えただろう。しかし、いじめっ子達の中心人物は、見るからに人格が捩れている風であり……。ここからは、怒涛の展開に繋がり、そして、“まるで夢のように非現実的な”ラストシーンで終わる。

一部に凄惨な殺戮シーン等織り込みつつも、全般的には、北欧の雪景色に馴染む、陰鬱ながら透明感のある悲しい物語であった。ラストシーンは、どう解釈すれば良いのだろうか。あのままを現実と受け入れるべきか、それともあれは為されなかった“夢”と見るのか。また、エリと共に登場し、彼女に献身し続けた中年男の姿は、何かの暗示なのか。映画で得た感想はそのまま持っておくとして、元々の物語がどういう意図のものかも知りたいので、気が向けば原作(→「MORSE -モールス-」(ヨン・A・リンドクヴィスト/ハヤカワNV))も読んでみたい。

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