FFTAに100時間の費やしたには、さっくり終わる軽いゲームをプレイしたいと思い、ならばジャンルはアドベンチャーで決まりだと思い、中古投売りを買っておいた「ルクス・ペイン」を始めた。
「人間の精神に寄生して負の感情を増幅させる精神寄生体・サイレントに、家族を惨殺された青年が、組織に授けられた特殊能力でもって立ち向かう」という、暗めの設定をネット記事で得て以来、ひそかに惹かれていた作品だった。いざプレイしてみると、「暗め」は「鬱」の域に達していた。サイレントに取り憑かれた人々が迸らせる負の感情、彼等がたぎらせた衝動の巻き添えを食らった犠牲者が残した悲哀の思念。それらを空間から“削り出し”、断片的な単語の羅列として表出したところを読み取り、事件解決の手がかりを得る。目標達成の爽快感を僅か上回る後味の悪さが徐々に蓄積し、プレイが進むにつれ気持ちが沈んでいくが、“削り出す”達成感と、各々個性豊かで魅力的な登場人物達の行く末への不安と、事件の真相への興味に引きずられ、沈んだ気持ちで黙々とプレイを続行した。サイレントとの戦闘はその逆に、サイレントの描写も戦闘方式も、イメージとの乖離が大きい故に「タッチパネルを使ったミニゲーム」としか感じられず、作業として淡々とこなした。反射神経のない私でもクリアできる難易度だったから、ゲームへの感情移入に水を差されずに済んで良かった。おかげをもって、プレイ開始の翌々日、時間にして十数時間後に、無事エンディングを迎える事ができた。
個人的には、(中古で500円にて購入したという事もあって)充分に満足したし、主人公が美青年で声が宮野真守で、同じ組織内の主人公達と折合い悪いっぽい皮肉屋美青年の声が子安武人だったのも、「棚ボタ」とまでは言わないけれども「得した」と思ったのだが、「逆に、こういった要素を理由に敬遠する人もいるだろうなー」とも思った。事件が起こるのが学園周辺で、同級生達の多くが容姿端麗で、事件を解明する組織が同じく容姿端麗な未成年中心の能力者ばかりなのと合わせて、イマドキの少年漫画誌に載ってる系のオサレジュブナイルっぽいというか、腐女子人気当て込みを穿って見られるだろうというか……。確かに、眼鏡の古書店長や、古武道遣いの菓子屋息子や、女顔の秀才ハッカーは、冷静に考えれば露骨に狙い過ぎである事だし。