Green-Green(世界はニャーでできている。-なでしこ館-)
吸血鬼好きを自称したい私であるが、「BLOOD」については、「アニメ:数年前に1回観て、小夜の姿&声がはっきり印象に残っているが、肝心のストーリーはほとんど覚えていない」「ゲーム:上下両方ともワゴンセールでおさえたが、分岐方法がよくわからなくて上巻序盤で放置(いつかはクリアするつもりアリ)」というレベル留まり。その「BLOOD」が、このたび実写映画化するという話だったので、話思い出しがてら&興味本位&期待少々で観に行ってきた。
観終わった直後には、エンディングロールのバックにかかるロックを聴きながら「なぜ外人はホラー映画の後に必ずロックを流しますか?」と思っていたところが歌っているのはGLAYと気付いて一人気まずい思いをしつつも、「これはこれでなかなか。決して悪くない。わざわざ観に来た甲斐があった。少なくとも『BLOOD+』よりは興味持てたし」程度の好印象を抱いた筈だった。しかし、その日の内に「新劇場版ヱヴァンゲリヲン・破」を観たせいで、印象が全て吹き飛んでしまい、後に拾い集めて再構成するのに随分な時間を要する事となった。
さてこの作品で、手放しで「良い」と感じたのは、「小夜を演じるチョン・ジヒョン」&「チョン・ジヒョンが演じる小夜」。配役決定当初は、「猟奇的な彼女」「僕の彼女を紹介します」で知られる女優だけに、これら2作品のCMの影響(本編は観ていない)でアッパー系という印象があり、ダウナー系入ってる小夜を上手く演じられるか心配だった。しかし実際に観てみたところ、アニメ版の小夜に感じた無機質さと異質さと危なっかしさをそのままに演じていて、心配は全くの杞憂だった。演技ばかりでなく、話の構成や演出――具体的には、「血飲みかけで戦闘に巻き込まれ」「小夜を親身に案じるオヤジキャラが(以下略)」「たっぷり尺を取っての“無数vs1(しかもコブ付)戦闘場面」等――もあって、非常に肩入れして固唾を呑んで彼女の動向を見守った。古い(しかも死に掛けた)ラノベの話で恐縮だが、「破幼の剣」(前田珠子)のラエスリールも、きっとこんな感じなんだろうなあと思った。
一方、その小夜が追い求め続ける宿命の敵・オニゲンは、「オニゲンを演じる小雪」が良かった反面で「小雪が演じるオニゲン」が肩透かしだった印象。静謐で妖艶であればある程凄みを増すキャラである為もあり、小雪の演技には何の不満もなかったのだが、構成的に、オニゲンの圧倒的な強さや人類滅亡の覇者的役回りを感じさせる場面がなかった気がした。登場場面の「しょうもない理由で人間虐殺」は、人間を虫けら程度にしか思っていない人間性の描写であって強さの描写じゃないし……。クライマックスの戦闘で、とんでもない邪魔を喰らってしまったのは、その場はつい見過ごしてしまったけれども、後で感想を反芻した時に致命的ミスだったと感じた。