荻窪&西荻窪は、カレーの名店が地味に多く、その中でもHUGEの「個性的で華やかなスパイス使い」と、フェリスフーの「パンチが効いていながら毎日でも食べたい優しい味」が、特に気に入っていた。HUGEは、店主さんの体調不良により、昨年12月に閉店。私がそれを知ったのは、今年3月、既に改装されて別店舗となった前を通り過ぎた時だった。
そして……フェリスフー。いつからだったか、長い事閉店が続いており、「そういえば前にマスターが『腰を悪くして長期休業した事がある』って話してらしたから、ひょっとして再発しちゃったのかな?」と気にかけていた。フェリスフーに行けない間に、早稲田「らっきょ」や中野「ヤミヤミカレー」等の美味カレー店を発掘してはいたけれども、私にとって外食カレーの中心はフェリスフーであったから、フェリスフーの再開を心待ちにしていた。
だが、願いや虚しく。フェリスフーのマスターは、今年4月にお亡くなりになられていた。mixiのトピでその情報を知り、信じたくないから否定材料を得るべくmixi外を検索した結果、複数筋から同様の情報が上がっているのを見て、事実と判断せざるを得なくなった。
フェリスフーは、カウンター席の狭い店で、カレーはサラサラで、スパイスが香り豊かだけれども辛味は強くなく、種類によってはココナツミルクも入っていたりして、胃に負担が無くて毎日でも食べられるし食べたい味だった。具は、肉系がニンニク強めなスタミナ系の味で、野菜はごろっと大きくて、どちらもカレーによく合っていた。カレーを作るマスターは、何処となく不器用さを孕んでいる風な感じに、柔らかく優しい人だった。常連を名乗れる域にまでは達していなかったけれども、こちらの顔を覚えてもらえるぐらいには通い詰めていて、他にお客のいないタイミングでは少しばかり世間話をさせて頂いたりもした。
フェリスフーのカレーは、基本一通り食べていたつもりだけれども、中でも私のお気に入りだったのは、「アボカドとトマトとマッシュルームのカレー」「鶏肉と豆とオクラのカレー」「鶏団子?と春菊のカレー」「グリーンカレー麺」、そうそう「オムレツとカレー」なんてのもあった。これまでずっと、美味しいカレーと安らぐ時間を、どうもありがとうございました。