来る月末に備えて、処理の前倒しに励んでいた。システムのデータをチェックし、処理可能なオーダをピックアップし、処理を実行し、完了ボタンを押して、オーダのステータスを書き換えていた。ふと履歴を振り返ってみると、ステータスが書き換わっていないオーダがあった。処理実行後に完了ボタンを押したつもりが、ボタンを押し忘れていたのか。それとも、隣り合った「完了」ボタンと「キャンセル」ボタンを押し間違えたか。その手のミスは割と日常茶飯事なので、私はいつものように軽く反省しながら、ボタンを軽く押し直して軽く流した。
ところが他にも、ステータスが書き換わっていないオーダがあった。そして同時に、同じ現象に遭遇している人が他にいた。少なくとも今回に限っては、私のうっかりミスでなく、システム側の不具合であった。厄介な事に、ボタン押下直後のステータスには変更が反映されており、ここでシステムをログアウトし再ログインしてみても、ステータスの変更は維持されている。しかし一定時間(数分程度)が経過すると、何がどうなるのやら、ステータスはボタン押下直後の状態に巻き戻るのであった。
この、「変更が反映されない」ではなく「反映後少し経って巻き戻る」時間差は、映画「メメント」を想起させ、本来無機質であるシステムの不調を、まるで脱出不可能な悲劇的理不尽のように見せるのであった。もしも私が映画「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」を観ていたならば、別のものを見て取っていたに違いない。