電車に乗った時。優先席が空いていて、優先席以外の座席が空いていなくて、優先席へ優先的に座るのが望ましい人が乗り合わせていない場合、私は躊躇いなく優先席に座る。しかしそこは優先席であるので、優先席へ優先的に座るのが望ましい人が乗り込んできたのを確認するや否や、速やかに席を立つようにしている※1。
私が、「優先席へ優先的に座るのが望ましい人」に席を譲るのは、優先席に限らない。普通の座席であっても、「優先席へ優先的に座るのが望ましい人」が近くに居合わせて、他に空席がなくて、私の体調が悪くない限り、極力席を立つ。「優先席へ優先的に座るのが望ましい人」が「優先席へ優先的に座るのが望ましい」のは、つまり「座席に座らせて差し上げるのが望ましい」ということなのだから、優先席に座れない場合は非優先席に座らせて差し上げるべきである。とはいえ、私は人間ができていないので、内心で呪詛を撒き散らしながら席を立つ。呪詛の向け先は、「優先席へ優先的に座るのが望ましい人」ではない。「『優先席へ優先的に座るのが望ましい人』に席を譲らない、その時優先席に座っている人達」である。
大事な事なので二度書く。私は人間ができていない。「優先席へ優先的に座るのが望ましい人」に、己が手に入れた全てを譲る優しさを持ち合わせていない。私は、割と空いている休日の電車に乗った時等、「今日は比較的健康体だから、座席は他の人達に譲ろうっと」と考えて、「でも立つならば、過ごしやすいポジションをキープしたいな」とも考えて、手すり際や壁際を早々にキープすることがある。そんな時、「優先席へ優先的に座るのが望ましい人」が、優先席前に行かず優先席以外の座席前にも行かず、手すり側や壁側にやってきて、さも居心地悪そうにきょろきょろした挙げ句、私が確保しているマイベスト立ち位置へ、何らかの意志が感じられる視線を投げかけてくることが、少なからずある。私はその時確実に、「優先席へ優先的に座るのが望ましい人」に対して、内心で呪詛を撒き散らす。何故あなたは、優先席やそれ以外の座席に座っている人に対してでなく、手すり側や壁側に立つ私に対して、譲られようと願うのか。座席じゃなくて立ち場所を望む自分が慎ましいとでも思いたいのか。単に貴方は、貴方のものを占拠した厚かましい人種との難易度高い対決を避けて、如何にも付け入りやすそうな私を選んだだけなのに。
※1 「明らかに登山の行き帰りで、元気溌剌な老人集団」のように、「私の視点から、『優先席へ優先的に座るのが望ましい』か疑わしい人」でもない限り。
予報は雨(カラカル/動物園写真館 本館)/ボロボロの子猫を拾った(※テキスト※)&死んだ飼い猫のヒゲが冬物についていたときの切なさ(※テキスト※)&その怪奇現象とは、夜寝ていると、布団の上を何かがじわり、じわりと移動する、というもの(※テキスト※)(以上3点、ねこメモ)