「暑くなってきたら是非やってみよう」と、胸の中で温めていた案件があり、先日機会をとらえて実践してきた。向かう先は丸の内、ブリックスクエア。人気ぶりを侮っていた初回は空振りに終わり、満を持して備えた2回目で念願のバターケーキをゲットした、あのエシレ。バターケーキ入手時に、店内の隅に冷凍ケースと中に眠るアイスの数々を見つけ、「バター屋のアイスなんて珍しいから是非食べてみなければ」とずっと考えていたのである。
エシレへ向かったのは、前々回&前回とは逆に、閉店時間を控えた夜の時間帯であった。世間的には、OL&リーマンが仕事を終え、私的な買い物や趣味・同僚達との一杯に時間を費やす頃合いである。「“仕事帰りのOL”が帰路でエシレに立ち寄った場合、果たして店内はどんな様子なのか?」にも興味があった。いざ店内に入ると、開店直後の行列こそないものの、室内が狭く感じられるほどの利用客がいた。残っている商品は、焼き立て焼菓子と生菓子が幾つか。前回買った、大きくて素朴な焼菓子が売り切れていたのは意外だった(再び買う気満々だったので)。代わりに、ドライフルーツが飾られたパウンドケーキ風の菓子を買う事にした。それと、お目当てのアイスこと、「エシレ・グラス」。味は「ブール」と「ブール・オ・キャラメル」の2種類があり、当然両方ともを選んだ。
会計を済ませ、店の外に広がる中庭的な空間に出て腰を落ち着け、買ったばかりのエシレ・グラスを袋から出して食べた。溶解による風味劣化を阻止するには、買ってすぐに食べるのが一番。「ブール」はフレーバーを加えていないタイプで、一般的には「バニラ」や「ミルク」といった呼称が該当するのだろうが、このアイスは違う。売りにしているのは、バニラの香りでも牛乳の新鮮な甘味でもない、材料の2割も占めているというバターがもたらすコク。しかし、コクがあるのにしつこさが欠片もない。私の貧相な喩えによれば、「レディーボーデンの方向性で、雑味を消し去って高級に仕上げた感じ」。非常に美味しいし、値段相応なのもわかるが、私の語彙では他人に説明も紹介もし辛い。その逆が、「ブール・オ・キャラメル」。これのポイントは非常に判り易く、“大人向けのキャラメル味”である。たっぷりのバターに隠れない、濃厚な甘さと香ばしい苦さ。この苦味は、「ほろ苦い」の枠に留まっておらず、子供の舌には美味しいと感じられないに違いない。癖になりそうな味だったが、そうそう食べられるお値段ではない。