諸事情あって、勤め先のサーバに置いた旧いファイル&フォルダをひっくり返している。ファイル作成&名付け規則を適当ぶっこいた為に統一性が失われた一群、詳細を理解せぬまま前任者に従い作成していたものが作成不要となり以後放置された一群、前任者の前任者以前が作成しており中身も把握できずもはや手のつけようがない一群――。“歴史”と呼ぶにはドラマ性に欠けるが、“地層”程度のロマンを見い出したい、センチメンタルな今日この頃。
その、掘り起こしたファイル群中に、職場で目にするには異質なファイル名が複数あった。片仮名の固有名詞を、わざわざ平仮名に置き換えている。字面の可愛らしさを追求た訳でもなければ、作成者である私が古ぼけたロボット表現を気取って、地の文を平仮名に片仮名を平仮名にあべこべ表記していた訳でもない。
かれこれ数年前、私の勤め先環境においては、ファイル名の片仮名「サ」「ス」等使用が禁忌であった。ZIP圧縮する時だったかメール添付する時だったか、詳細は失念したが、何かの手順を行うと、ほぼ必ず文字化けを招くのだった。文字コード関連の不具合ではないか?――と、推測するまでで力尽きた当時の私は、「平仮名に置き換える」という、結果だけ見れば頭悪いばかりの運用で対処していたのだった。
数年経つ間に、何がどうしてどうなったか全く定かではないが、文字化け問題は解消した。ファイル名に片仮名のサ行を好きなだけ使い倒して構わない時代が到来していた。発見されたファイル群は、私の手によってファイル名を修正された。ちっぽけな歴史が一つ、闇へと葬られた。