久々の残業が終わってようやく帰るタイミングを正確に見計らった突発豪雷雨の中、噂によれば有名な店であるらしい「びふかつみその」へ行ってきた。席について一息もついてメニューを眺める。「びふかつ定食:1980円」「串かつ定食:1980円」。この辺りならば、普段の夕食の倍前後はするけれども、美味しい食べ物に出逢った時に速やかに支払う心の準備はできている。更に隣の頁を見ると、「びーふヒレかつ」「びーふロースかつ」と、部位を限定したメニューが。「お、そちらのほうが範囲が狭い分、味もわかりやすいかも」と思って値段を見て、選択肢から速攻除外。何かのお祝い事でもないと、5千円弱は支払えない。大人しく、「串かつ定食」を選択した。
さて、「串かつ定食」を注文した私だが、テーブルに運ばれてきて口に運ぶ直前まで、その「串かつ」は「豚かつ」だとばかり思い込んでいた。「串かつ」=「安い」=「豚かつ」なる思い込みによるもので、その思い込みが「びふかつみその」=「びふかつ屋」という認識を凌駕しかけていた。口に入れる直前に思い出せたのは幸運だった。でなければ、肝心な最初の一口めを、「これ、豚肉じゃないじゃん!!」という超くだらない“発見”で台無しにするところだった。
気を取り直して一口目。食べなれた豚かつのジューシーな歯応えとは異なる、ふんわりした柔らかさ。牛肉なのに“牛臭さ”がない。「牛肉は牛臭いからあまり好きじゃない、鶏肉がいちばん好きで次が豚肉か羊肉」というのが私の肉順位であるが、これは恐らく自分が日頃手の届く範囲での話なのだろう。1食2千円台の牛肉がこの美味しさなのだから、恐らく牛肉という食べ物は、値段が張れば張るほどに美味しく、そして日本国内において上位は遥か上の世界まで広がっていながらも、美食家なら手を伸ばせる距離であり、よって「肉は牛肉がいちばん美味」とされているのだろう。逆に鶏肉は、「安くても美味しい」とされているから、ブロイラー等は旨味を増すより前の短い生育期間で出荷されるのが最も割が良く、結果として「日本の鶏肉は不味い」等と言われるのだろう。これら全て、みそのの串かつを一口食べただけで捏ね上げた憶測。
そんな訳で、肉のあまりの美味しさに驚いたのだが、私が食べているのは串かつであり、構成要素はもちろん肉だけではなかった。一緒に揚げられた葱が、ほのかな辛味を残しつつしっかり甘く、かつに適度な水分を添えて、非常に良い塩梅だった。また、同行の友人は「びふかつ定食」を注文していたのだが、一口もらったこちらは火のしっかり通った「串かつ定食」とは異なり肉の内部に赤味を残した火加減で、とろけるように美味しかった。次があれば、こちらを注文してみたい。