2006-12-31 年越し/萌え猫&アニマル/はてブより/「ヴェニスの商人」 [長年日記]

[雑記] 年越し

「大晦日そして元旦というものは、ちゃんと生きてない人間が迎えてはならないものではないか」という考えが私の根底にあるらしく、12月に入ってから「私は年末を迎えるまでに死ぬんじゃないか」という不安に取り憑かれ、不安に取り憑かれたといっても強度は少しも強くないので日常生活に何の支障もなく、胸によぎる微かな不安は死の苦痛と諸々の後始末を引き受けざるを得ない人達の精神的苦痛ばかりで道を絶たれる自分の将来計画は皆無、しかし今日こうして無事に31日を迎えた。良いお年を。>自分

[動物] 萌え猫画像

鬼のいぬまに(気が付けばデブ猫)・オオミソカ(日刊ニャーゴ君とキャビア君)・フク&アニキ、あらあら、今年からダブル・ラッキーセブンで〆ですね。(フクトラ日記)・カカオナキ君と仔猫たちの昼寝(The Greek Cats)/廃熱あったか(ねこ様NEWS/かーずSPより)

「カモそっくりのサツマイモ収穫 韓国」(国際時事新聞)

今までにも「鳥に似たサツマイモ」と称するサツマイモの画像をネットで何度か見かけたが、びっくりするほどここまでカモそっくりなのは恐らく初めてじゃなかろうか。

[VIDEO・DVD] ヴェニスの商人(主演:アル・パチーノ/監督:マイケル・ラドフォード)

TSUTAYA online 作品紹介

親友のバッサーニオから借金の申し込みを受けた貿易商アントーニオ。親友の頼みであれば快諾したいアントーニオだが、彼の全財産は取引の為に船に積まれて他の国へと運ばれている最中であった。そこでアントーニオはバッサーニオの保証人となり、バッサーニオは彼の証文を手にユダヤ人の高利貸しシャイロックの元へと金を借りに行く。アントーニオはかつて、公衆の面前でシャイロックを侮辱した経緯があった。シャイロックは過去の屈辱に言及しつつ、無利子で大金を貸し出す代わりに「期限内に金を返せなければ引き換えにアントーニオの肉1ポンドをもらう」という条件を突きつける。

有名なシェークスピアの喜劇「ヴェニスの商人」の映画化作品。子供の頃に読んだ子供向けの訳本では、確かシャイロックは純粋に強欲な悪人であり、よって「ヴェニスの商人」は明快な勧善懲悪の後味すっきり爽快な喜劇であった。しかし今作は(というか「原作も」かもしれないが)、ユダヤ人達が日常的に迫害される様&逆にバッサーニオのろくでもなく傲慢な生活っぷりが描かれており、単純な勧善懲悪だけでは割り切れない深みが感じられた。

この物語は一言で言うなら、「“持てる者”には全て与えられ」「“持たざる者”からは持っている物が全て取り上げられる」という筋書きである。土地も与えられず職業にも制限が加えられていた(らしい)ユダヤ人に唯一残されたに近い職業が高利貸しであった(らしい)、しかしその高利貸しを営んでいるという理由でキリスト教の教義を盾にキリスト教徒達から唾棄され、それでもひたすら溜め込んだ金と育て上げた娘は若さと恋を盾にキリスト教徒に持ち去られ、その憤りを自分を実際に侮辱した当人であるキリスト教徒に「正当な形」で叩きつけようと試みれば他の者達から「慈悲を示せ」と宥めすかされ、突っぱね続けた挙げ句が「正当な形」が己に跳ね返り残りの財産を奪われ尽くし改宗をも強いられて、アイデンティティと仲間とをまで失う悲劇。

だいたいシャイロックに「慈悲を示せ」とぬかす奴等の、何て甘っちょろい生き様をしている事か。働かずに財産を食い潰しながら他人様を見下して生きるくだらない男、そんな駄目な男にホイホイ金を貸すのが友情だと信じる馬鹿な男、または駄目な男に容姿だけで一目惚れするつまらない女。おまえらみたいにヌルヌルぬくぬくと生きている人間が垂れ流す無責任な“慈悲”を、シャイロックのように迫害される中肩肘張って生きなければ生きていけない、娘と金の喪失を同等に嘆き悲しんでしまうのも情を捨てずには迫害の中生き抜けなかったであろう男に求めるとは何て残酷な。確かにあそこでシャイロックが憎悪を捨てる決断を下せたならば、それはとても素晴らしい結末になったに違いない。だがしかし、憎悪を捨てられなかったシャイロックが、あのヌルイ連中よりも貶められるべき人間だったとは私は思わない。なのに彼奴等め、シャイロックが全てを失って呆然自失しているのを余所に、指輪を無くした無くさないとどうでも良い痴話喧嘩を繰り広げ、最後には種明かしてハッピーエンド。あの馬鹿馬鹿しい痴話喧嘩のせいで、「夫の親友にして恩人を救うべく」若い法学者に扮して裁判に乗り込んだポーシャの才知と勇気は色褪せた。

自分を“持たざる者”の1人だと認識している私は、ご覧の通りシャイロックにほとんど完全に肩入れしてこの作品を鑑賞し、強情で強欲なシャイロックの悲劇に極上のカタルシスを得る事ができた。「物語的には必然」で「心情では割り切れない」バランス加減の後味悪さまで含めて、とても素晴らしい作品だった。

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