2004-11-12 ニュースいろいろ/「掌の中の小鳥」/「沙羅は和子の名を呼ぶ」 [長年日記]

[動物]萌え猫画像/クマがニワトリ30羽襲う/蚊は音にも誘引される?/ルリカケスの集団が畑のサツマイモを盗掘/「タマちゃんのことを想う会」敗訴

萌え猫画像 美猫への道(megalomania ネコニッキ(11月9日付))・キャットウォークというやつ?(Here is “EDEN”(11月12日付))・驚愕の真実(ネコと映画と私(11月12日付))・ツライ現実(とんぢる劇場(11月12日付))

最後の1件は、「萌え」なんて浮ついた言葉のカテゴリでくくるのは正直どうかと思ったけれども、逆に猫好きで猫画像を見にいらっしゃる人に見てもらうべきかとも思い、敢えてここに置きました。

「<クマ被害>奈良でニワトリ30羽襲う」

クマは日頃木の実等を食べているという話だったけれど、飢えが切羽詰まると鶏のような小動物?も襲って食べるという事だろうか。

「音に誘引される蚊確認 宮城琉大名誉教授」

カエルの血を吸う蚊が生息する場所でカエルの鳴き声を流し、近くに蚊の捕獲機を設置したところ、カエルの鳴き声を流さない場所の捕獲機には蚊がほとんどかからなかったのに対し、たくさんの蚊が捕獲されたとの事。

「『カルト』の表現は相当 タマちゃん団体側が敗訴」

タマちゃんはとっくに姿を消したのに、人間のほうはまだ何かをやっていたらしい。

[食べ物]ファミリーマート「極旨まん」/かまぼこ博物館

「<プレスリリース>ファミリーマート、豚トロ肉使用の中華まん『極旨まん』を発売」(→関連:ファミリーマートより)

豚トロ肉好きの私としては、見逃せない中華まん。1個190円と結構お高めなのがネックだけど、まず一度は食べてみたい。

かまぼこ博物館デイリーポータルZ(11月12日付)より)

1人1500円で、鈴廣のかまぼこを手作りさせてもらえるらしい。作ったかまぼこが蒸し・冷却の工程を経て完成するまで約70分かかるのを見越して、宅急便の取扱いもあるという手回しの良さ。

[医療・健康]精巣に含まれる蛋白質を「男性避妊用ワクチン」に/「1日2時間以上のTV」で肥満の危機

「『1日2時間以上のテレビ』で肥満の危険」ポトチャリポラパ(11月12日付)より)

TVをほとんど観ない代わりにビデオ・ネット・ゲームを楽しんでいる私にも、同程度の肥満の危険があるのだろう。「1日1時間余計に歩くとリスク減」だそうであるが、歩くのは苦労じゃないけど1日1時間もそれに時間を割かれるのが辛い。

[読書]掌の中の小鳥(加納朋子/創元推理文庫)

出版社作品概要

頭の回転が早くてクールな青年・圭介と、行動的で正義感の強い女性・紗英を主人公にした、連作短編集。「ささら さや」のしみじみとした感動にすっかり惚れ込んで、古本屋で加納朋子の本を探し回っていた私だが、この3冊目にして壁にぶち当たってしまった。映像的にも字面的にも美しい映像の中に詩的な謎と鮮やかな真相が埋め込まれた各エピソードは、確かに前に読んだ2作以上に際立った面白さであった。なのにどの辺が私的にダメだったのか。

まずは、前2作で私が魅力を感じたポイントである「登場人物達の不器用な優しさ」が、今作では「登場人物達の冴え渡る機転」にそっくり置き換わってしまっている点。際立った面白さの各エピソードも、「登場人物の才知をひけらかす為の小道具」に見えてしまった。またヒロインの紗英は、クールが売りの圭介とは違って「他者に対する優しさを自然に発揮できる女性」として描かれようとしていた気配であるが、初登場(圭介との出会い)が「『機転も利かず勘も働かない馬鹿な男』であるBFをおっぽりだして帰るぐらいの薄情女」だった以上、後の優しさとやらが読者に対する点数稼ぎに見えてダメだった。

またそれだけなら、それでも「圭介くんも紗英さんも頭が良くてカッコイイですね」で済むところなのだが、最後の最後に「いちばん大切なモノは理屈や論理じゃなくて直感である」との絶対ルールが提示される点、これがはっきりと致命的だった。圭介と紗英の機転比べでは常に圭介の勝利でありながら、最終的には理屈が放棄され、「男よりも勘が働く」女が問答無用で勝利するのである。冒頭で「可愛らしくもしたたかな、女たちへ」捧げられている通りであると言えばその通りなのだが、したたかなだけで全然可愛くないよー腹立つよー。「男の人って本当にこういう女性が好きなのっ!?」と、通り掛かる男性を誰彼構わず捕まえて首根っこ捕まえて問い詰めたい気分になった。

……と、ここまで散々書いておきながら何だが、私がこの作品を「『ささら さや』の加納朋子の本」として読んでいなければ、「女性優位思想が鼻につくけれど面白い本でした」で済んだだろう事を断っておく。ついでに、5篇中でいちばん気に入った1篇の感想をメモ。

「掌の中の小鳥」
圭介は学生時代、容子という女性に対し、彼女が描く不思議な魅力を放つ油絵越しに想いを寄せていた。しかし、彼女が描き上げた最高傑作でもある絵が、何者かによって無惨に汚されるという事件が起きる。彼女はそれを機に筆を置き、彼女を平凡な一女性として好意を寄せていた圭介の先輩と付き合うようになる。4年後その先輩と偶然再会した圭介は、ようやく事件の真相を知るに至る。自身が描く美しい油絵そのものの、繊細な容子という女性が魅力的な1篇。初っ端に容子の存在があるからこそ、彼女と比べれば無神経な紗英が私には魅力に欠けて見えるのだろう。また、そういった繊細な女性に傷心した圭介だからこそ、紗英のような奔放で打たれ強そうな女性に心惹かれたのだろう。

[読書]沙羅は和子の名を呼ぶ(加納朋子/集英社文庫)

出版社作品概要

こちらは、連作ではない短編集。各作品の初出は1994−99年とバラバラ、頁数もバラバラ。あとがきにもある通りに、音感を重視して選ばれた「呪文」のような単語が重要な役割を担わされている点が共通である。「掌の中の小鳥」が私に合わなかったのでこれも合わないかと思ってドキドキして読んだが、合わないものもあったもののとても好ましいものもあり、全体的には良い印象の短編集だった。計10篇の内、感想を幾つか。

「商店街の夜」
寂れた商店街の薄汚れたシャッターに、ある日魔法のように鮮やかな絵が描かれ、商店街の様子は一変する。じっくりと説明される「変身前」の商店街が、日本全国にありふれていそうなうら寂れ具合かつ親しみ具合なので、そこにもたらされる「変身」が非日常的・幻想的でいながら、ごく身近な出来事のように感じられた。私は芸術音痴故に芸術的なモノに強い憧れを抱いているのだが、絵にしろ文章にしろ、金銭を生まずに魔法を生む類のモノがきっとこの世に存在するのだと信じている。
「沙羅は和子の名を呼ぶ」
新しい家に越してきた小学生の和子は、家にやってきた少女・沙羅とすぐに親しくなるが、しかし沙羅の姿は和子以外の人間の目には映らない。表題作。親には空想の友達としか受け取られない沙羅であるが、妖精めいたあるいは物の怪めいた何か超自然的なモノかと思わせておいて、意外な正体に唖然とさせられた。「ふわふわと夢を見ていて許されるのは子供だけ、大人はいつまでも夢の残滓にしがみついていず、現実と向き合い現実を見据えなければならない」と、ファンタジックな香り漂う作品に教え諭されるのがいちばん効く。

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