2003-10-05 ショコラ(仮)〜捨てられていた仔猫を拾いましたが、たった半日だけしか一緒にいてくれませんでした [長年日記]

[レオン]番外編:ショコラ(仮)

この件につきましては、ツッコミやメールを頂いてもお返事ができない旨、予めお断りしておきます。

13:00 田舎に移った両親に頼まれ、大事な忘れ物とやらを取りに実家(無人)へ行った。家捜し数十分で目的の代物を無事見つけ出し、友人が待つ近所の駐車場へ戻ると、友人は車から降りて見慣れない紙袋片手に所在無さ気に立っていた。中を見るように言われて訝しみながらのぞくと、中には茶色い仔猫が1匹入っていた。ショコラ(仮)、膝の上

友人が言うには、駐車場の隅からみーみー声が聞こえるので、まさかと思いながらものぞきに行った結果がこれらしい。「どうする?」と尋ねられても、見てしまった以上後には退けない。うちで飼うにしても里親を捜すにしても、まずは病院へ連れて行かないと。後の予定を変更し、先日レオンの手術を受けた動物病院へと車で向かった。

数時間放置されていた様子なので、今週カラオケ屋に行った時にもらった粗品のタオルで震えている仔猫を包み、少しでも暖を取れるようにしてやった。持ち上げるとみーみーと鳴くが、膝の上では何故かおとなしい。体毛は綺麗な虎縞で、顔も仔猫というよりは虎の赤ちゃんのようだった。

14:00 目当ての動物病院に到着。駐車場にやたらと車が入っており、どれだけ混んでいる事やら……と病院の入り口を見ると、ガラス戸の向こうは真っ暗で入り口のところに何やら貼り紙が。仔猫を膝に乗せた私を置いて、友人が張り紙を見に行った。しばらくして戻ってきた友人、「院長先生が亡くなったらしい」……って、えええー?

その院長先生こそが、先日レオンの口の中の腫れ物を切除してくれた先生である。ついこの前の話なのに、あの時は普通にピンピンしてらしたのに、それが突然お亡くなりになるなんて……。病院が休みなのに駐車場が混んでいるのはなるほど法事中だからか、と納得しつつ、別の病院へと急いだ。

14:30 次に向かった動物病院は、友人の実家の行きつけであるらしい。さほど混んでおらず、すぐに診察の順番がまわってきた。

こちらの先生いわく、まだ生後2−3週間の乳離れしていない猫で、性別は雄(っぽいがこの時期ではまだ確定ではない)。里親に出すにも後1ヶ月弱育てて乳離れさせてからでないとダメなので、まずは10日間育ててからまた来てくれとの事。うんちもおしっこも普通に出しているので問題ないでしょう、との言葉にとても安心した。粉ミルク・哺乳瓶・スポイトを受け取って家へと急いだ。

16:00 家へ到着。お湯に溶かして人肌に冷ましたミルクを飲ませた。最初の数口は勢い良くちゅぱちゅぱと飲んだが、その後すぐに飲みが鈍ったのは、母乳と比べると不味いせいで仕方ないのだろう。食欲よりも眠気といった感じなので、ミルクを飲ませるのは諦めて寝かせる事にした。

レオンは突然の乱入者をひどく警戒し、やや離れたところに座ってこちらの様子を凝視していたが、昔のような「よその猫を見ると大興奮して暴れまくり誰彼見境なく襲う」といった調子ではなかった。去勢のせいで性格が丸くなったようである。この状態ならば、この仔猫をうちの子にするのに何の問題もなさそうだ、と思った。

21:00 2回目のミルク。私は哺乳瓶その他を綺麗に洗って煮沸消毒。ちょうどその頃、恐る恐る近付いて覗き込むレオンの目の前で、仔猫が寝返りを打ち、びっくりしたレオンが「ふーっ」と警戒の声を発するという一幕があったそうである。友人からそれを聞いてとても笑った。

仔猫はまだ体が小さいので、縞模様が相対的に大きく、見れば見るほど虎に似ていた。おなかのところの毛の模様が、チョコレート菓子のマーブル模様にそっくりなので、「ショコラ」という仮名を考えた。「レオン」とのバランスも考えたつもりで、自分ではなかなか気に入っていたが、仔猫が雄確定だったら合わないかなあと心配もしていた。

23:30 3回目のミルク。友人が用意をしている間に、携帯のデジカメでショコラ(仮)の写真を撮影。ショコラ(仮)がみーみー鳴くとレオンが傍にとんできて、さも「お前には不安で任せておけない」と言った目で私を見詰めるのだった。

ミルクを飲む直前、ショコラ(仮)は何度も大きく口を開けていた。私はそれを見て、いい加減おなかが空いてミルクが飲みたいんだと思っていたが、しかし友人が与えたミルクをショコラ(仮)は今度もあまり飲まなかった。心配の余り弱音を吐いて、友人に注意された。私にはできる事もないし翌日は仕事なので、後を友人に任せて先に眠った。

3:00 切迫した友人の声に起こされた。「ダメだった」――寝惚けた頭にも言葉の意味は明白。寝床から取り出され目の前に運んでこられたショコラ(仮)は、口をあんぐり開け薄目を開いたままで時を止めていた。ペットボトル製の即席湯たんぽの傍らで寝ていたのでまだ温かだった体も、夜気に晒されみるみる内に冷たくなっていった。