退社後、あちこち寄り道して遅くなった帰り道。ふと見上げた空に、不思議な光景があった。月は五日月辺り、その影になった部分の輪郭ギリギリに、明るめの星1つ。あの星は月の影から出てきたばかりなのだろうか、これから月の影に隠れるところなのだろうか、それとも単なる目の錯覚なのか。地下鉄に降りるまで、ずっと眺めながら歩いた。
後で<土星食>土星を月が隠す 東日本で20日夜という記事を見つけ、目の錯覚ではなかった事・その星が土星だった事がわかった。偶然垣間見た、ささやかな天文ショーだった。
残り6篇を読んだ。感想を1つピックアップ。昨日読んだ4篇と比較すると、抽象的で理解しづらい作品が多かった。
家に着くと、レオンが「お帰りダンス」をしてくれた。「お帰りダンス」の具体的な演技内容は、にゃーと鳴きながら玄関まで大急ぎでやってくる→壁で伸びをしながら爪を研ぐ→靴を脱ぐ私の足に頭をすりつける→突然スイッチが入ったかのようにその辺を駆け回り出す→部屋へ入ろうとする私の姿を見て我に返り一緒に部屋へ戻る→幕、といった具合。日によって微妙に変化する。
今日は、「突然スイッチが入ったかのようにその辺を駆け回り出す」途中で、月1回の回収日に備えて玄関脇に積み上げておいた古雑誌の山に駆け上った。ビニール紐で束に括ってはいないそれは、レオンの足下で雪崩を起こし、レオンは古雑誌と共に玄関に投げ出された。それはまるで、フィギュアスケート選手がジャンプ後転倒した姿のようだった。痛々しくて見ていられず、事態が把握できずにきょとんとしているレオンを見捨て、私は先に部屋に入ったのだった。