その日は仕事帰りに大学で同じクラスだった人と家の近くで飲む予定になっている。 家へ帰る途中、一緒の電車に偶々乗った同じ会社の人が、 途中駅のホームで寝ているその同級生を発見して車内に引きずり込んでくれる。 彼は既に泥酔状態でこれ以上酒が飲める訳もなく、 仕方なく家に連れ帰って1晩泊める。翌日、彼は礼を述べて爽やかに去る。
私は大学のメインストリートを誰か友人と一緒に歩いている。 大学関係者?から手渡された1枚の紙には、 「今年の退学者」の一覧が記載されている。その中に私の名前もある。 (おかしい、私は遙か昔に辞めて今では似非OLをやっているのに。 でも今大学にいるって事は、復学して、 でも単位が取れなくて結局また辞める事になったのかも知れない、 きっとそうに違いない) 私は納得し、急遽沸き上がる名残惜しさを胸にキャンパスを歩く。
最近の春めいた気候に喚起された記憶=夢なんだろうけど、良い思い出と嫌な思い出とが濃縮された学生時代を振り返っても、戻りたいという気は決して起きない。仮に戻りたいとしても、中退じゃなくて除籍の身では不可能。そして夢の中で飲む約束をしていた同級生は、ただ同じ学科だっただけの間柄。変な夢だった。全ては春のせい。
「R−0」3部作の2巻目、「ゆび」「ゼロ」を合わせたシリーズ全体では5巻目に当たる。フライングゲットして即日読了、しかし感想を即書くのが憚られ少し日を置こうと思ってそのまま忘れかけていたのだけど、本を持ち歩き忘れて1冊も読んでない今日が感想を書くのに良い機会である。
前作「〜アムール」は女性達の不条理なまでの怒りが炸裂する内容で、女の私ですら部屋の隅でガタガタ震えかねない雰囲気だった。今作では、その辺の背景にやや触れられていて少しは精神的安定が得られたが、肝心の謎部分については語られなかったので、このままじりじりと最終巻を待つ事になる様子。連続物としては正しい姿だろう。