2010-05-08 鶏肉専門店「鳥繁」 他 [長年日記]

鶏肉専門店「鳥繁」

何かの拍子に辿り着いた、まちBBS又は2chの荻窪飲食店スレッド。そこに、「味は申し分なく美味しいけれども、商売気のなさ故に、開店したばかりなのに先行きが心配な店」として、1軒の唐揚げ屋が紹介されていた。鶏肉好きの私としては、近場で美味しい唐揚げ屋があるならば、是非とも行っておきたいところ。それが、商売気がないともなれば、その謙虚さ故にますます行っておきたいところ。そして、先行きが心配ともなれば、とるものもとりあえず行っておきたいところ。にも関わらず、店の場所をしっかり把握しておかなかったが為に、行きたいのに行けない、間抜けで宙ぶらりんな状態に放り出された(私が私を放り出した)。

しかし、食いしんぼの神は私に味方した。ひょっとすると、私自身が食いしんぼの神ではあるまいか?という勢いであった。その日、夕食の食べ場所を決めかねて、何となく荻窪銀座~荻窪北口商店街を徘徊していた私の目に、間違いなくその店と思しき「唐揚げ」の文字が飛び込んだ。躍り上がらんばかりの勢いで、飲食フロアの2Fへと登り、席に着いて、少し落ち着いてメニューを眺めると、ここは「食事処」ではなく「飲み屋」寄りの店であった。酒があって、ライスがない。ついでに言えば、内装は清潔だが手が掛かっておらず、メニューはシンプルで、「飲み屋」としても商売気がない。食事をする気満々だった私は、少しばかり放心したが、瞬時に体制を立て直し、“飲み”モードへ移行した。美味しい唐揚げの為なら、ビールの1杯如きわけもない。でも炭水化物も食べたいから、唐揚げの他にポテトサラダも注文しておこうっと。

唐揚げは揚がるのに時間がかかるという事で、ビールを飲み飲みポテトサラダ等をつまみつまみ、待つ事十数分。運ばれてきた唐揚げは、私の目に神々しい食物であった。鶏のどかんと半身が、圧力釜か何かでじっくりと揚げられており、手羽先と胸肉とササミともも肉が、一時に味わえてしまう。味は、テーブルに備え付けられた塩数種を使用するのだが、鶏本来の美味しさが損なわれずに味わえてたまらない。しかも手羽先部分は、カリカリに揚がった骨の香ばしさまで楽しめてしまう。こんなすごい、シンプルにして贅沢な鶏料理を、普遍的な「唐揚げ」の名称で売り出してしまうのは、未知の人達に実態のイメージが伝わらなくてもどかしくもったいない、と思った。ここもまた、「商売気がない」と言われるポイントかもしれない。美味しいし素敵な食べ物なので、この先是非是非繁盛しますように。

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